トレーナー トレーナーの仕事

アスレティックトレーナーの管理と役割の分担に関する考察

2024年10月14日

プロの組織ではアスレティックトレーナーなどのメディカルスタッフが複数名在籍して、メディカルチームとして活動していく必要性があります。
しかし、個性もあり業務をうまく分担しながら組織として機能させることは決して容易ではありません。

プロバスケチームで20年以上という長年の経験のもと、ヘッドトレーナーとしての役割やいかに組織として機能させるかという点を解説していきたいと思います。
もちろん環境によっても異なる点、人材によっても異なる点があり、全てに当てはまるかは未知数ですが、私の経験をもとに解説していきます。

私は現在もプロバスケチームでアスレティックトレーナーとして活動して24年ほど経験してきました。その間プロチーム、大学、高校、日本代表、モンゴルでの活動と色々なカテゴリーでも経験してきました。プロチームでも9チームほど関わってきましたのでそれぞれ環境の違ったスタイルでの仕事の仕方を実践してきた経験があります。

管理のための5つのポイント

この記事はPodcastで発信した内容を元にブログ記事化しました。
Podcastプロバスケチームでアスレティックトレーナー『ジャンクトレーナーのケアルーム』

役割分担の課題

トレーナーの持つ資格や得意分野は人それぞれ異なり、その強みを最大限に活かすための体制を整えることが重要です。

時にはヘッドトレーナーが自分のやり方を優先し、アシスタントの成長を妨げる事があります。
今のご時世プロのスタッフは知識や技術よりも人間力を求められる時代へと変化しています。

ヘッドトレーナーといえど独裁的なスタンスでは通用しなく、いかに個々を尊重し、やり甲斐も与えつつバランスを取る方が機能する傾向です。
もちろん考え方は人それぞれ、ヘッドトレーナーとしていかに自分を犠牲にしてでもチームに貢献するかという自責マインドはとても重要です。

また、組織や環境が変わると、同じ資格を持つトレーナーでも対応の仕方が違うことがあります。
これはどの業界でも同様であり、施設や会社によって業務のスタイルやマニュアルが異なるためです。

対処するためには、柔軟な適応力と、各トレーナーの強みを活かすための明確な役割分担が求められます。

効果的な管理のための5つのポイント

  1. 一人ひとりの強みを活かす
    各メンバー取得している資格も異なる点もあるので強みを生かし、役割を持たせることで、組織全体のパフォーマンスを向上させられる。
  2. 動機付けと目的を提供する
    メンバーのやり甲斐と生き甲斐を考えることで、モチベーションを高め、仕事の質を向上させられる。
  3. 役割と責任を明確にする
    各メンバーに明確な役割を持たせ、作業を分担することで、効率的なチーム運営を実現することができる。
  4. 個人に過度な負担をかけない
    一人に負担がかかり過ぎないように、業務のバランスを考える。
    心身共に健康を守ることで、チーム全体の安定性を確保します。
  5. サポート体制を確立する
    何が起こっても誰が欠けてもサポートできる体制を整えることで、予期せぬ事態にも柔軟に対応できる組織を作る。

上記の5つのポイントを考慮すると良いメディカルチームとなり、お互いを尊重できるかと思います。

特にトレーナーは保有している資格が異なるケースが多く、学んだ環境も異なるため、考え方やアプローチの仕方は異なってきます。
そんな時にいかに仲間を信頼して尊重して組織として機能させるかという点を度外視してしまうと文句ばかりややり甲斐のない形となりやすいものです。

我慢すること、自己犠牲してチームをいかに効率よく対応できるかという点が大切な点かと思います。

個人の強みを活かす

個人のトレーナーの資格やスキルは多様であり、それぞれが持つ強みを最大限に活かすことが、効果的なチーム運営の鍵となります。
個人の強みを引き出し、チーム全体のパフォーマンスを向上させるための方法について解説します。

トレーナー強みと弱みの把握

まず、各トレーナーの資格やスキルを明確に把握することが重要です。
これにより、どのような役割が最も適しているかを判断し基礎にすることが築かれます。

特にアシスタントトレーナーや経験値不足の方は、何が適しているのか、どのように関わりたいのか定期的な面談やスキル評価を行うことも必要となります。

チーム環境での強みの最大化

次に、個人の強みをチーム全体で活かすための戦略を考えます。

例えば、特定のスキルを持つトレーナーをリーダーシップポジションに配置することで、他のメンバーのスキル向上を促進することができます。
チーム内での役割分担を明確にし、各メンバーが自分の強みを発揮できるような環境を整えることも重要です。

成功事例の紹介

実際に成功した事例を参考にすることも有効です。
例えば、あるチームではどのように組織づくりしているのか、別競技ではどのような点に力を入れているのか。

このような事例を共有し、シーズンでの改善点や次シーズンの予算、組織構成にも計画できます。

個々の強みを活かすことは、チーム全体の成功に直結します。
より効果的なチーム運営を目指すために何が必要で改善できるか優先順位をつけて対応することです。

やる気を起こさせる環境を作る

職場におけるモチベーションの重要性は、特にアスレティックトレーナーの管理において必要不可欠な要素です。

モチベーションが高い環境は、チーム全体のパフォーマンスを向上させ個人の成長を促進します。
やり甲斐と生き甲斐を考えるための具体的な方法について説明します。

やり甲斐を与えて責任を持たせる

やり甲斐を感じる環境を作るためには、まず個人の役割と責任を明確にし、それに応じたフィードバックを提供することが重要です。

これにより、各メンバーが自分の貢献がどのようにチーム全体に影響を与えるかを考え、実行することができます。

我々トレーナーはいかに選手を良い状態にしてパフォーマンスを発揮してもらいチームが良い成績を収めればやり甲斐を感じられます。

生き甲斐を感じさせる方法

生きがいを感じさせるためには、メンバーが自分の仕事に誇りを持てるような機会を提供することが必要です。

例えば、成功事例を共有し、達成感を共有できる場を設けることが効果的です。

トレーナーなど医療関係の仕事を選ぶ方は

・奉仕すること
・サポートすること
・自分が関わって感謝されること
・関わって感動してもらう事

上記に対して非常に喜びを感じとれる人間性が根本的にある方が非常に多いものです。

裏方でのサポートに対しても前向きになり、このチームや組織に関われた事に喜びと生きがいを感じてもらえるような対応をすることはとても大切なマインドです。

多少の悪環境であっても一生懸命取り組むことで財産となって経験値を積むことができ信頼される人材になるはずです。

このような点に配慮して組織作りできると心も満たされ長く関わりたいと思える組織だと思います。

育成サポートのバランス

若手アシスタントや経験不足のメンバーに対しては、上から目線ではなく、共に成長する姿勢が重要です。

プロの組織では即戦力が求められ、人材を育成することは厳しい現実もあります。
特にアンダーカテゴリーではトレーナーとしての経験値不足と人材不足によって学ぶ機会が少ない現実があります。

本人が学ぶ姿勢は大切ですが、いかにサポートできる体制を確立していくかは組織力としても考えていく必要はあります。

役割と責任の定義

役割と責任の明確化は、効果的なチーム運営において重要な要素です。
各メンバーが自分の役割を冷静に、それに応じた責任を持つことで、チーム全体の効率が向上します。

ここができないと仕事を任せられないということで組織のバランスが崩れてしまいます。

役割の明確化の重要性

役割を明確にすることは、チームメンバーが自分の強みを最大限に活かすための始まりです。

トレーナーといってもメディカル部門だけが仕事ではなく、雑務や荷物の運搬など医療系以外の仕事もとても多いものです。

担当する部分の仕事だけでなく、欠員が出ても対応できるようにする事もいざとなった際に役立ちます。

業務内容のマニュアル化

プロの組織ではトレーナーも移籍することが多く、業務の引き継ぎがうまくできないこともとても多いものです。
仕事内容をマニュアル化しておくと誰でも対応できるようになりやすい形式となります。

しっかりしておくことで、移籍した場合でも後に他チームから評価が上がっていきます。

作業負担のバランスを確保する

作業負担のバランスをとることが重要です。
特定のメンバーに負担がかかり過ぎないように、必要に応じて調整を行うことが求められます。

技術の差によって1人に集中しやすい業務内容でもありますが、時間での限度もあるので、効率よくバランスを取る必要があります。

特に遠征での活動では時間の制約、環境での制約、備品での制約など、本拠地での環境とは異なった状態で作業していく必要があります。
その中でも最善の環境づくりを目指して対応できるかという点もポイントになります。

サポート体制の維持

アスレティックトレーナーの管理に関して、サポート体制の維持はかなり重要です。

チーム一丸となって機能するためには、誰が欠けてもサポートできる体制が必要です。

チーム全体が柔軟に対応できるようになると良い組織となります。

サポート環境の重要性

サポート環境は、チームメンバーが安心して業務に取り組むための基盤です。

信頼関係を目指して、向かい合って支援文化を育むことで、チームの結束力を高めることができます。

誰がかけても対応できるようにするのが組織力です。

チームのレジリエンスを確保するための戦略

  1. 明確なコミュニケーション
    定期的なミーティングやフィードバックセッションを通じて、メンバー間のコミュニケーション
  2. 役割の柔軟性
    各メンバーが複数の役割を担えるようにトレーニングを行い、欠員が出た場合でもスムーズに業務を継続できるよう準備
  3. サポートネットワークの構築
    内部および外部のリソースを活用し、必要に応じてサポートを受けられる体制を整えておく

予期せぬ事態への準備

予期せぬ事態に備えるためには、リスク管理の計画を立てる事です。
これにより、問題が発生した際に迅速に効果的に対応することが可能になります。

・試合中のアクシデント
・トレーナーの交通事故
・病欠
・家族の不幸

など突然起こる事に際しても、慌てずにサポート体制を維持することは、アスレティックトレーナーの管理に関して重要な要素です。

まとめと今後の展望

これらのポイントは、アスレティックトレーナーの管理において重要な役割を果たします。
まずは、役割の分担の課題を考えて、次に効果的な管理のための5つの重要なポイントを記しました。

まとめ

いかに選手スタッフのサポートをして健康な状態でシーズンを送れるかが試合の成績に反映していきます。
最善を尽くし、最高の組織を作り上げればやり甲斐となり、この組織で活動できて良かったと思えれば嬉しい限りです。

そんな想いで日々精進しています。
今回の記事が参考になれば幸いです。

この記事はPodcastで発信した内容を元にブログ記事化しました。
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