アスリートのモチベーションと怪我予防についての重要性を紹介します。
この記事は、選手にどのように意識を持たせ、継続させるかというテーマに焦点を当てています。
私は現在プロバスケチームのアスレティックトレーナーとして20年以上活動しています。
これまで小学生からプロ選手まで各カテゴリーで選手と関わってきた経験がありますので、その経験からアスリートのモチベーション維持と怪我に関して紹介していきます。
選手にどう意識づけさせ継続させるか
選手にどう意識づけさせ継続させるかを9つのテーマに分類して紹介していきます。
1.傷害予防の取り組み方
2.トレーナーの考えをどう表現するか
3.メニューの考案
4.個人対応とチームドリル
5.カテゴリーで異なる点
6.取り組みさせる動機づけ
7.継続させるマインドセット
8.ルーティン化する
9.与えるだけでなく減らしていく
取り組むべき流れ
選手が怪我を予防するには自分自身のウィークポイントを理解する必要があります。
そして怪我が起こりやすい部位に対してどう取り組むのかをトレーナーやストレングスコーチのサポートも必要となります。
メニューを構築して、練習や試合前にドリルを実施してより良い状態でプレイする習慣を作る必要があります。
そのためにはそのドリルを実施他あとに有効性を実感できれば習慣化しやすくなっていきます。
ただし、ドリルの数が多すぎると長続きせずその場限りの対応となり選手はルーティン化につながりません。
いかに効率よく短時間でも実施できるかをトレーナーも配慮してアップグレードすると良いかと思います。
選手自身が必要性を感じると習慣化していきます。
モチベーションを維持しながら取り組む動機づけを与えてサポートするのがトレーナーやストレングスコーチの腕の見せ所となります。
もし怪我をしてしまった場合にも、次に向けたアプローチと怪我をしたことで得れる未来像を提示すると切り替えも早くなります。
選手のメンタルを良い状態に導き日々サポートすることで怪我の予防だけでなくパフォーマンス向上につながっていきます。
1.傷害予防の取り組み方
傷害予防の取り組みは、スポーツにおいて非常に重要な要素です。
大きく分けて、再発予防、動作習得、動作改善、強化の4つの側面があります。
トレーナーやメディカルスタッフは、競技や年代に応じて怪我を予防するために予防策に注力します。
怪我が発生した場合には、再発を防ぐための対策が必要です。
動作習慣に問題がある場合や、動作改善が必要な場合もあります。
基礎体力の向上やセルフケア対応、トレーニングで耐性の強化、治療技術の活用も重要です。
特に、競技によって起こりやすい怪我に対して、練習前に刺激を入れたりストレッチで可動域を広げ、練習後にはアイシングなどの実施も求められます。
例題
例えば、バスケットボールでは、中学生の年代で腰椎分離症が起こりやすいことが知られています。
成長期における骨の成長と筋肉のバランスの問題から発生することが多いです。
動作の改善や成長期の対応、怪我のリスクを軽減することも必要となります。
骨盤や肩甲骨、胸椎の動きを改善し、負担を分散させることで、怪我の予防につながります。
腰椎分離症ではこのような点をクリアにしていくことが、怪我の予防において重要です。
このように年代によっても起こりやすい怪我も異なり、競技特性もあり、動作の確認も含めて何が問題で、その問題を引き起こしている原因は何か、原因に対する解決策はどうアプローチするかという点がポイントとなっていきます。
2.トレーナーの考えをどう表現するか
トレーナーが選手に対してどのように考えを伝え、理解させるかは非常に重要です。
特に、怪我の予防やパフォーマンス向上のためのメニューをどのように組み込めるかが鍵となります。
効果的なコミュニケーションの重要性
選手に対して、ただ指示を出すだけではなく、なぜそのトレーニングが必要なのかを理解させることが大切です。
特にジュニア世代では、競技やパフォーマンスの向上だけに意識が向いてしまう事が多いため、怪我に対する配慮まで至らないケースが多く、保護者やコーチのご協力も必要になります。
理解を促す方法
過去の症例を示したり、エクササイズのビフォーアフターを体験させることで、選手の意識を高めることができます。
また、有名な選手がどのように怪我を防いだりるかを紹介することも効果的です。
協力と教育の役割
選手は医学的なことは専門家ではないので知らないことも多く、トレーナーが導く必要性が出てきます。
近年学校の部活動だけでなく、クラブチームやプロ組織のユースチームなど活動形態も変化しています。
選手の送迎や練習時間帯、遠方までの移動、食事体制など保護者のサポートなくして活動できないケースも増えています。
トレーナー、コーチ、保護者が一体となって選手をサポートすることが求められます。
それぞれの役割を理解し、選手の主体性を引き出すための教育とマインドセットの形成が重要です。
トレーナーの多様な役割
トレーナーとして関わっている方でも様々な資格や専門性があります。
それぞれが自分の強みを活かし、選手をサポートする方法を考え、実践することが求められます。
バスケのトレーナー必須資格
例えばバスケットボールを例にするとトレーナーとして関わることができる資格として
・柔道整復師
・鍼師
・灸師
・あん摩マッサージ指圧師
・理学療法士
・日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
・アメリカのアスレティックトレーナー(ATC)
上記の7つの資格のうちいずれかを取得していることがプロ所属チームの条件となっています。
競技によっても必須資格が異なるので自分の専門分野を調べるようにして、対応できるように準備したいものです。
3.メニューの考案
アスリートのためのメニュー計画は、効果的なトレーニングを実現するために重要です。
以下のポイントを考慮することが求められます。
- 部位と目的の特定
どの部位に問題があり、目的は何かを明確にします。
例えば、腰椎分離症を防ぐためには、腰をメインにした体幹強化のメニューが考えられます。 - 種目数と時間のバランス
種目数を決定し、それを消化するのに必要な時間を考慮します。
メニューが多すぎても覚えられず継続できないので3-4個からスタートするなど配慮したいものです。 - 必要なアイテムの確認
筋膜リリースや筋力強化のために必要な道具を確認します。
例えば、トリガーポイントやチューブトレーニングが挙げられます。 - 個人とチームのニーズに応えたカスタマイズ
個人で行うべきものと、チーム全体で行うべきドリルを区別し、全体の時間を大切にします。
4.個人対応とチームドリル
個人対応とチームドリルについて説明します。
個人の要素としては、アライメントや体の習慣など、動作の問題が原因で起こる問題が挙げられます。
これらは個別に対応する方が効果的です。
チームで対応する方が良いのは、成長期に複数の人に起こりやすいケース、あるいは一時的に得る可能性が高い練習に対したドリルなどです。
チームドリルの例として
例えば、私の場合バスケットボールのプロ選手に対しては、足関節の捻挫に対する筋刺激や、肩の柔軟性と可動域、肩のインナーマッスルの刺激、膝前十字靭帯に対する障害の予防ドリルをチームとして導入しています。
これらのドリルは、全体で2分以内に終わるようにコンパクトにまとめられ、実施しています。
肩の障害予防ドリルはチューブを使用したインナーマッスルに対するドリルを導入してから、肩の怪我はほぼゼロになっています。
7年間で、肩の痛めた選手は一例のみで済んでいます。
このように有効と思ったものを継続して実施して大きなトラブルがなければ継続する。
3年間検証して修正して有効性と実感できたものは継続して実行することで予防として大きな財産となります。
個人対応としては、例として腰痛が出た時や試合後に背中や腰が痛くなる選手に対して、筋肉の刺激を入れて骨盤の動きを良くするドリルを行います。
またテーピングを巻く前にアイソメトリック(固定しての力発揮)とエキセントリック(伸ばされながら力発揮)を中心とした筋刺激を入れることでも対応しています。
コンセントリック収縮(縮めて力発揮)は選手自身が実施しやすいので、サポートドリルとしてアイソメトリックやエキセントリックの収縮を入れることで良い刺激となり、安定感も出て結果として大きな怪我をプロチームでも防いでいます。
昨シーズンではプロバスケチームで足関節の怪我によって試合出場ができなかった選手はいませんでしたので大きな成果となりました。
5.カテゴリーで異なる点
カテゴリーによっても対応の仕方は異なってきます。
・競技によっての違い
・年代によっての違い
・性別によっての違い
・小学生
・中学生
・高校生
・大学生
・社会人
・プロ選手
・シニア
競技によって異なるのはコンタクトスポーツ、ネットスポーツ、室内競技、屋外競技、階級制競技、水中競技などたくさんの分類に分かれていてその競技によっても怪我の種類や復帰、対応方法、アプローチ方法も変化するわけです。
年代によっても成長期によっても痛みの出る部位も異なり、ホルモンバランスも変化する、年代特有の怪我や性別による対応の仕方も異なってきます。
このあたりトレーナーも対応力を身につけて、どのようにアプローチするのか、セルフケアを中心とした自分自身でできることをやらせる教育要素、手を貸して治療行為にて対応するのか、トレーニングで強化して耐性やバランスを作っていくのかと様々な手段がある中でどのような方針で進めていくのか、選手、コーチ、トレーナー、保護者など協力体制をしっかりと構築した中で進めていくことが良いわけです。
6.取り組みさせる動機づけ
アスリートに対する動機付けの技術は、アスリートがトレーニングに取り組むために努力を高めるために重要です。
以下に、いくつかの効果的な方法を紹介します。
痛みの軽減と怪我のリスク軽減
痛みの軽減や怪我のリスクを軽減することは、アスリートにとって大きな動機付けとなります。
例えば、特定のドリルを行うことで痛みが軽減されると、選手はそのドリルを継続的に実施します。
怪我をした場合でも、再発を防ぐためにトレーニングを続けることが重要です。
いかに必要性を体感させるかが取り組みを継続させるポイントとなります。
パフォーマンスの向上
パフォーマンスの向上もまた、強力な動機付けの一つです。
ドリルを行った後に明確なビフォーアフターの違いが見られると、選手はその効果を実感し、トレーニングを継続する努力が固まります。
ストレッチポールを使った肩の可動域の改善や、腰痛の軽減などは具体例として挙げられます。
何もしないで競技に入るよりも筋肉や関節に対して調整するようなドリルを紹介して実行するだけでも怪我のリスクだけでなく、競技パフォーマンス向上につながります。
ちょっとした違いを認識させられるかはトレーナーやストレングスコーチの腕の見せ所となります。
継続的なトレーニングの重要性
選手がトレーニングを継続するためには、パフォーマンスの向上を認識できることが重要です。
体幹の安定性を高めるトレーニングや、競技に関連した動きを取り入れることで、選手はトレーニングの意義を理解しやすくなります。
年代によってもトレーニングの導入時期や種目、負荷も変化すると思いますので、トレーナー、ストレングスコーチ、コーチとの連携は必要となります。
個別対応の必要性
選手のポジションや個人のニーズに応じた個別対応も、動機付けが重要です。
選手が自分に合ったトレーニングを受けることで、より効果的に取り組めます。
個人によっても強みと弱みも異なります、さらにアライメントも違うので怪我の起こりやすいケースも個人差があります。
チームとしてのトレーニングだけでなく、個別に対応するメニューを怪我予防、パフォーマンス向上に向けて準備するとモチベーションにも影響するはずです。
7.継続させるマインドセット
継続させるマインドセットは、怪我のリスクをしっかりと説明し、パフォーマンスが向上することに結びつけることが重要です。
疲労感を軽減し、メンタル面でのモチベーションを高めることも含まれます。
選手がいかに継続的にトレーニングを続けることができるかが数ヶ月後から数年後に大きな差となっていきます。
選手がドリルを続けるためには、最低でも2週間は続けることが基準となる。
3日坊主で終わってしまうドリルは、選手の心に響いていない証拠であるので対応の工夫が必要です。
毎日実施した方が良いアクティベーションも確実に実施できるようにしてルーティン化できればより良い形となります。
私の場合、最終的には選手がプロのバスケットボールチームで怪我なくシーズンを過ごすことが目標です。
選手が後々、トレーナーの言葉の重要性に気づくことができれば、それがフィードバックとなり、選手の意識レベルが向上します。
必要性を感じてもらい、継続してもらい、当たり前のように取り組めるようなプログラムとなればルーティンへ移行します。
8.ルーティン化する
選手が自分のルーティンに組み込むことができれば、継続は力になります。
チーム全体でのドリルとして取り入れることも重要で、特に足関節や肩周りのインナーマッスルのトレーニングはドリル化して毎日のように実施する方が有効だったりします。
競技特性にもよりますが、パフォーマンス向上や怪我の予防につながります。
ルーティン化は、アスリートのコンディション調整において重要な要素です。
日々の練習において、同じドリルを継続的に行うことが、最終的には大きな成果を生むことになります。
その結果として怪我のリスクを軽減できます。
アスリートが自分のルーティンの中にドリルを組み込むことで、効率的なトレーニングが可能になります。
個人のルーティンやドリルを日常的に取り入れることで継続は力なりという言葉通り、習慣化が浸透します。
マインドセットされ、スイッチが入るのです。
ルーティンの重要性
ルーティンを確立することは、アスリートが自分の体と向き合い、パフォーマンスを向上させるための基盤になります。
日々の小さな努力の積み重ねが、最終的には大きな差を生むのです。
ルーティンと縁起担ぎは意味合いが異なり、同じことを繰り返し実行することでメンタル的な安定にもつながり、自分自身の流れやスイッチも入り一気に競技モードになるのがアスリートの特徴です。
このような点は学生もプロ選手から学ぶ点も多いかと考えます。
自己動機付けの向上
ルーティンを持つことで、アスリートは自分自身をより良く考え、自己動機付けを高めることができます。
自責マインドを持って練習や技術向上のための活動に進めるものです。
また怪我をした際にも迅速に対応できるようになります。
選手は怪我をすることでショックを受けてメンタルが低下してしまうことはよくあります。
この時にプラス思考のマインドを持てるようになれば時間効率や取り組みも大きな差となって復帰時期にも影響します。
例えば怪我をしたことで日頃できないようなトレーニングやウィークポイントの強化なども実施でき、バランスが良くなることもあります。
怪我をしたことで普段では見えない景色が見えてスタッフが裏でたくさんサポートしていることに気づくこともあります。
普段試合に出場しているとベンチで応援している仲間の存在も気づけるものです。
怪我をしたことで人間力が向上してそのメンタル要素が大きなプラスとなって選手として大きな成長につながることもあります。
同じ怪我をしても考える思考力によってプラスとするかマイナスのままか大きな差となっていくことがあります。
マインドセットを意識しておくだけでも違いが出てくるのがスポーツの面白みだと思います。
ドリルの統合方法
ドリルを日常の練習に組み込む際には、少ない数から始めて、徐々に増やしていくことが効果的です。
これにより、選手は無理なく継続でき、習慣化が実現します。
一度にたくさんのことを実施しても消化することに意識が向き、内容の質を捉えなければこなしているだけで身になっていないことも十分考えられます。
9.与えるだけでなく減らしていく
選手にリハビリや補強などのトレーニングメニューを与えることは良いことですが、経過に伴いメニュー変更も発生するものです。
その際にとても大切なことは与えるだけでなく、不要な要素を削減することはとても重要です。
これは、新しい要素を追加するだけでなく、不要なものを減らすという形で行われます。
メニューを増やすだけ増やすと時間もかかるし、どれが必要なのか見えなくなって選手が次第に実施しなくなる傾向があります。
選手の性格も考慮してメニュー数を確実に実行できる数に制限して対応して、メニューを入れ替えていくことアップグレードするといいかと思います。
選手はそれ以外にも競技のスキルに関しても時間が必要になり、制限もあるので良い形で練習や試合に臨めるように配慮してあげたいものです。
トレーニングの効率を高めるためには、追加と削減のバランスをとることが必要となるわけです。
これにより、選手がトレーニングを継続しやすくなり、パフォーマンスの向上につながります。
まとめ
アスリートのモチベーションと怪我の予防のための戦略として記しました。
選手が怪我を予防するには自分自身のウィークポイントを理解する必要があります。
そして怪我が起こりやすい部位に対してどう取り組むのかをトレーナーやストレングスコーチのサポートも必要となります。
メニューを構築して、練習や試合前にドリルを実施してより良い状態でプレイする習慣を作る必要があります。
そのためにはそのドリルを実施他あとに有効性を実感できれば習慣化しやすくなっていきます。
ただし、ドリルの数が多すぎると長続きせずその場限りの対応となり選手はルーティン化につながりません。
いかに効率よく短時間でも実施できるかをトレーナーも配慮してアップグレードすると良いかと思います。
選手自身が必要性を感じると習慣化していきます。
モチベーションを維持しながら取り組む動機づけを与えてサポートするのがトレーナーやストレングスコーチの腕の見せ所となります。
もし怪我をしてしまった場合にも、次に向けたアプローチと怪我をしたことで得れる未来像を提示すると切り替えも早くなります。
選手のメンタルを良い状態に導き日々サポートすることで怪我の予防だけでなくパフォーマンス向上につながっていきます。
この記事が参考になれば幸いです。
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