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スポーツ選手のためのメンタルヘルスツールSMHAT-1

スポーツ選手はメンタルの疲弊が激しい分野となっています。
これは選手のみならず、選手を取り巻くスタッフも同様です。

今回オリンピック選手に導入されていたメンタルヘルスツールを私が関わる競技のプロリーグでも導入することとなり、実際に選手に実施しましたのでその流れを分かりやすく解説いたします。

私は現在プロバスケチームでアスレティックトレーナーとして活動して20年以上となるベテラントレーナーです。毎日プロ選手と関わりケアをしたり、テーピングを巻いたり、リハビリを対応したりと関わっています。

今回紹介するツールはSMHAT-1と言いますが、The International Olympic Committee Sports Mental Health Assessment Tool 1になります。

SMHATとは

国際オリンピック委員会(IOC)のツールとしてSMHAT-1は、メンタルヘルスの症状や障害のリスクがある、またはすでに経験しているアスリート(16歳以上)にできるだけ早く気づき、タイムリーに適切な支援や治療に繋げるために開発された評価ツールです。

基本的には専門家の管理もとで実施することとなっています。
プロリーグでは各チームで担当者を選定して、担当者の管理のもと実施しています。

参考:
SMHAT-1(日本語版)https://www.ncnp.go.jp/nimh/chiiki/documents/SMHAT-1.pdf
SMHAT-1(英語版)https://olympics.com/athlete365/app/uploads/2021/06/BJSM-SMHAT-1-Athlete365-2020-102411.pdf

ステップ1 トリアージツール

メンタルヘルスの症状と障害のためのトリアージツール
トリアージとは、フランス語で選別するという意味で、緊急時における状況の変化による患者の優先順位を選別する時などに使用される言語。

ステップ1では10個の設問に対して記してもらいます。
過去30日間でどのくらいの頻度で次のことがありましたか?

1.チームメイトの近くにいるのが辛かった
2.私はやるべきことをやるのが難しいと感じた
3.私のモチベーションは下がっていた
4.私はイライラしたり、怒ったり、または攻撃的だったりした
5.私は怪我やパフォーマンスについて心配せずにはいられなかった
6.私にとってトレーニングはよりストレスになるものだった
7.私は選考のプレッシャーに対応するのが大変だった
8.競技生活を引退した後の人生が心配だった
9.私はリラックスするためにアルコールや薬物が必要だった
10.私は競技外で普段だったらしないような危険を冒した

上記の10問に対して

全くない1点
少しだけ2点
ときどき3点
たいてい4点
いつも5点

合計点を出して17点未満であれば問題なしとなり、終了となります。
後継得点が17点以上であればステップ2に進む

ステップ2 6つのスクリーニング

メンタルヘルスの症状と障害のスクリーニングツール

うつ項目9にチェックが入った場合、安全を確保するためのアクションが必要
全てのスクリーニングで閾値未満の場合はステップ3aに進む
1つ以上のスクリーニングで閾値以上の場合はステップ3bに進む

不安

この2週間、次のような問題にどのくらい頻繁に悩まされていますか?

1.緊張感、不安感または神経過敏を感じる
2.心配することを止められない、または心配をコントロールできない
3.いろいろなことを心配しすぎる
4.くつろぐことが難しい
5.じっとしていることができないほど落ち着かない
6.イライラしがちであり、怒りっぽい
7.何か恐ろしいことが起こるのではないかと恐れを感じる

全くない0点
数日1点
半分以上2点
ほとんど毎日3点

以下画像で紹介

ステップ3 

ステップ3a 簡易なサポートと観察継続

・選手に心理教育、マインドフルネス、瞑想、メンタルスキルトレーニング、ストレスコントロールなどの単一の介入または簡単な介入の組み合わせを紹介する

・ステップ1のトリアージツールを再実施して再評価する

ステップ1の合計点が16点未満ならここで終了
ステップ1の合計点が17点以上ならステップ3bに進む

ステップ3b 臨床評価とマネージメント

スポーツ医学の医師または有資格のメンタルヘルスの専門家が実施

・トリアージとスクリーニングのスコアの確認、解釈し、追加情報を得るための臨床評価を実施する
 これまで経験したスポーツ内外でのハラスメントや虐待についても聴取する

・評価によって重症度、複雑性、診断の曖昧さ、治療への反応を配慮する必要がある

実際の実施して

今回プロチームで実際に実施しました。
私の関わっているプロチームではステップ1で17点以上の選手はいませんでしたのでステップ2へ進むことはありませんでした。

しかしアンダーカテゴリーでも同様に実施し数名ステップ2に進んだ選手がいます。
トップ選手アンダーカテゴリーと環境もちがえばコーチやスタッフも異なってきます。

今回感じたことはどちらかというとトップ選手よりも学生の方がメンタルヘルスは必要性が高いのかという点も見えてきました。

私は現在メディカルのスタッフとして全てのカテゴリーに関わらせていただいています。
このように今回メンタルヘルスツールを実際に実施し、専門家ではないものの事前に予防策、組織としての取り組み、今後の対応とデータを蓄積していくことで新たな気づきも経験できたことは良かった点です。

選手個人によっても捉え方、立場、感覚の違いもあり、何が正解かはとても難しい問題かもしれませんが、コーチングやスタッフが選手にどう関わっていくかは指標となるのかと感じた点はとても良かったと考えています。

より良い環境で組織の構成ができれば活性化にも繋がりこのようなツールを活用することで情報が違った点からも入手できることは大変実施して良かったと思っています。

まとめ

スポーツ選手に対するメンタルヘルスツールSMHAT-1を今回紹介いたしました。

SMHAT-1

今回の記事が参考になれば幸いです。

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