プロスポーツチームではシーズン中は試合で勝敗を争うこととなり、非常に盛り上がるプレイオフをかけたリーグ戦の戦いから、プレイオフで最終的にチャンピオンを決める争いが繰り広げられる。
一方シーズンオフではGM(ゼネラルマネージャー)が次シーズン更なる好成績を求め、選手やスタッフの人材を確保する期間となる。
ストーブリーグとは
シーズンオフに繰り広げられるGMによるチーム編成確立のため、自分のチームに必要な選手やスタッフの人材を他チームと駆け引きをしながらいかに獲得するかというGMの戦いである。
元々はプロ野球のシーズンが秋にかけて終了し、冬の寒い時期にGMの戦いが繰り広げられることからストーブリーグと呼ばれ、プロ野球から他のプロスポーツにも波及していった。
バスケットボールの場合
私の関わるスポーツはバスケットボールであり、プロリーグが日本全国ほほ全ての都道府県に立ち上がりかけているため、チーム数はかなり多いリーグの組織となっている。
プロバスケットボールリーグの現在は、FAやドラフトの制度もないため、毎年かなりの人材がチームを移籍しながら活動している。
バスケットボールの特徴
特にバスケットボールという競技において各ポジションが分業されていて、選手やコーチとのスタイルや相性も大きな要素となるため、日本でトップクラスの選手であってもチームによっては相性が悪く力を発揮されないというケースはよくあることである。
そのためGMはさまざまな要素からコーチの人選や選手の獲得、スタッフの獲得と日々格闘しながら奮闘するのがストーブリーグということである。
ファンやブースターの楽しみ要素
そして各チームのファンは誰がチームを退き、誰を獲得したのかで一喜一憂しながらシーズンの予想をしたり、新たな期待を抱いてシーズンをチームと共に一緒に戦っていくこととなる。
バスケットボールの場合は、特に選手の移籍が多く、大物選手の移籍もとても多い、その結果でまるで別チームのような快進撃を繰り広げるチームもあれば低迷してしまうチームも出てくるわけである。
コアなファンはチームが低迷していると、頭にくるけどやめられない、そんな思いでチームを支えてくれている縁の下のちからもちであり、彼らがいるからチームは運営できているので感謝である。
GMの役割
GMにはさまざまな業務があり、ヘッドコーチも含めてチーム側のトップになるのでチームをまとめなければならない。
選手やスタッフの獲得を任されるので信頼できる人間力が必要となってくる。
選手の獲得
近年新型コロナによる影響のため、海外の選手が日本に入国するためのビザの申請がかなり遅延してしまい、昨シーズンは外国籍選手が開幕に間に合わないという事態がどのチームでも発生していた。
まずビザの問題がある外国籍の確保が必須となってきている。通年では外国籍選手は他のチーム構成を見ながら戦力図をイメージして外国籍選手を新規も含めて獲得していたが、まず初めに外国籍選手の獲得を決めなければならないのが今シーズンの大きな特徴である。
外国籍選手の獲得
外国籍選手の場合、日本に来日してから2週間の隔離期間があり、ビザがなかなか取得できないことから、早期の決断が迫られている。
昨シーズン日本でプレイした選手はビザの継続手続きによりチームを移籍してもビザの申請受理はしやすいため、既存の外国籍選手の獲得を優先されることが多い。また新規に際しても早期決断で開幕戦に準備期間も確保できるかということがポイントとなっている。
日本人選手の獲得
選手により、もちろん年俸が異なるため、チームとしては選手に対する人件費をどのくらい準備できるのかによって勢力図が異なってくる。もちろん金額だけではなく、チームの環境やコーチ、選手同士の相性などさまざまな要素は出てくる。
チームとしては四方八方に片っ端から声がけするわけにはいかないので、どの選手にまず話をするのかによって状況はさまざま変化していくこととなる。
帰化選手・アジア枠選手の獲得
現在日本のリーグでは帰化選手の影響がとても大きく、競合チームになるためには帰化選手の確保が必須と言っても過言ではない状況である。
そのため、いかに帰化選手という特別枠を獲得するために、予算組をするのか、チームの魅力を提示できるのかがポイントとなってくる。
まだアジア枠に関してはリーグ全体でも数名となっているため、今後の影響力に注目したいところである。
コーチ陣の獲得
チームやGMの考え方にもよるが、先ずヘッドコーチを確保する場合と選手を確保しながらヘッドコーチを獲得する場合もある。
一番良いのは、ヘッドコーチを決めて、ヘッドコーチの戦術にマッチする選手を獲得することが望ましいのであるが、現状ヘッドコーチが決まってからでは選手獲得に遅れが出てしまい、リクルートが失敗してしまう場合もあるため、とても難しい問題である。
ヘッドコーチの獲得
ヘッドコーチの場合、指揮をとる最重要人物であるため、シーズン途中から来季の話は行われているわけであり、複数年契約や単年契約など契約スタイルはさまざまである。チームとしては長期安定したチームづくりを目指すわけなので、良いヘッドコーチとは複数年でチームを作り上げたいものである。
しかし、チームの相性や環境によって力を存分に発揮できる方もいれば、対応仕切れずに実力はあるのに結果を出すことができない場合もある。
この辺りは、アシスタントコーチとの相性もあるので、ヘッドコーチがやりやすいアシスタントコーチで一緒に連れて移籍するケースもある。
アシスタントコーチの獲得
近年アシスタントコーチも分業化が進んできています。コーチも個人のスキルを向上させることがメインのスキルコーチ、戦術を分析するアナリスト、ヘッドコーチの片腕となる本来のアシスタントとさまざまなタイプのコーチが役割分担してきています。
日本では英語が話せるコーチも多くなってきているので、さまざまとなりつつあります。
アナリストの獲得
自チームや対戦相手の戦術の分析や相手選手の特徴などビデオコーディネーターやスタッツを分析することがアシスタントコーチの役割であります。
シーズン中は睡眠時間を削りながら酷使しての業務となるため、かなりのスタミナを要する仕事となり、アシスタントコーチは分業し、人材確保しているチームは多くなっています。
PCで動画を見てクリップにまとめる作業はパソコンに長けた方や得意な方でないとかなりしんどい作業となり、体調を悪くしやすい仕事でもあります。
なかなかマルチな才能を持ったスタッフはまだまだ少なく、少数精鋭のため今後更なるニーズが期待できる分野です。
ストレングスコーチの獲得
選手のコンディショニングやトレーニングなど体の強化をするのがストレングスコーチとなります。
トレーニングにも選手によって体を大きくする目的、パフォーマンスを向上させる目的、怪我を予防する体づくりの目的など、個人によってもニーズが異なるので、全てに対応できるにはかなりの経験が必要になるポジションである。
特にストレングスコーチはどのチームも1名の常勤やパートタイムなどチームによっても扱いがさまざまであるのも事実である。
スタッフの獲得
チームスタッフには、マネージャー、アシスタントマネージャー、通訳、トレーナー、アシスタントトレーナーなどの役割がある。
スタッフにもさまざまなタイプがいる。
ベテランで全てを熟知して選手やスタッフのストレスを軽減するタイプ、チームのバランスを考えて行動し、軌道修正をかけて裏でまとめるようなタイプ、グイグイと邁進して取り仕切るタイプ、まだまだ経験値不足であるがバリバリ働くフレッシュタイプなど各分野のプロフェッショナルとして、チームを支える仕事を任される専門家たちである。
マネージャーの獲得
マネージャーも現在仕事量が多いこと、特にアウェイで分散して仕事をしなければならない事もあるため、チーフマネージャーとアシスタントマネージャーの2名体制が増えてきている。
マネージャーの手腕によって、チームのストレス度が大きく関わってくるし、チームとフロントの架け橋を担う役目もあるためとても重要なポジションである。いかに質の高い内容を提供できるかということになってくる。
通訳の獲得
ただ英語が理解できて訳せれば良いのではなく、その競技に対して的確にわかりやすく、訳して伝えなければならない。同時通訳をしていかないとスピード感について行けず、練習が止まってしまう場合もある。最近は外国籍選手も多く、1人で数人の外国籍選手の生活面も支えなければならないので、その役割は大きい。
さらに怪我などの医療系でも選手に帯同し、医師やトレーナーとの間に入りこなしていかなければならないため、役割は大きい。
ゲームレポートやチームの書類の翻訳を、エージェントとのやりとりなど時差も発生する業務であり、契約の期間、外国籍選手の合流時期、開幕前などはかなり多忙な日々となる。
トレーナーの獲得
トレーナーも現在2名体制のチームがかなり多くなっている。選手の治療の時間帯がどうしても重なってしまうため、2名体制にすべきだと思う。
現在のプロバスケットボールであるBリーグは60試合のレギュラーシーズンを戦うため、かなり疲労や怪我など起こりやすいリーグとなっている。
そのためトレーナーのスキルも必要不可欠であり、コロナによって感染対策における業務が急増している。
トレーナーの場合、シーズン中の休みはかなり少なくなるのも事実である。試合選手が怪我をしたらOFF日でも病院へ帯同したり、ケアしたりと休みだからといってOFFで気分転換することもなかなかできない。
OFFに関してはチームスタッフ各自仕事があるかと思うが、シーズンが終わるまでは常に気が気ではなく、かなりの精神的ダメージが加わる職業である。
そのため、心身ともに健康ということがとても大切である。
優先事項
チームによって全くと言っていいほど状況は異なってくることが予想される。
ヘッドコーチの獲得が先決なのか、外国籍選手の獲得なのか、帰化選手なのか、日本人選手なのか、異なってくる。
またチームによっても使えるお金も全く異なってくるので、その辺りは動向を注目して行きたいところである。
何から手につけるのか、そのタイミングによって大きく影響されるので、GMの手腕の見せ所となってくる。
移籍の動向
その年によって選手やスタッフの移籍が多い年と少ない年が変わってくる。
今年はとても選手の動きが多く、昨年のコロナによる影響の反動が出ているのかと思われる。
移籍者リスト
選手はリーグによる移籍者リストが存在し、タイムラグは生じるもののリストによって選手の動向は確認できる。
今年はどちらかというとリーグよりもチームからのリリースの方が敏速に対応し、多くのサプライズを見ることができたのではと思っている。
チームスタッフに関しては、移籍者リストというものは存在しないので、なかなかチーム側も把握できない状況となっているのが実情となり、情報網の広さがものをいうシーンも多いのかと感じている。
特にチームスタップはGMの専門外の人材が多いので、GMにとっても頭を悩ませる事が多いように感じている。
運とタイミング
選手やスタッフの場合、ごく一部の優秀な人材はオファーがあり、良い条件で移籍できる事もある。
しかし、そのような方はごく一部で、チーム間同士での駆け引きによって、その人材が決断したチームもあれば選ばれなかったチームもあるわけだ。
そのため、次の手を準備し、会議し、検討して、人材確保のための交渉に入るわけである。
どのチームも全てがうまくいくわけではなく、これは選手やチームスタッフも同様で、タイミングの要素も大きくなる。
そして、ポッカリと空いてしまった穴ができた場合には、運よく人選されることもよくある事である。
その辺りは実際に私自身も運やタイミングで良い仕事を得たときもあれば、うまくいかなかった経験もある。
そのため、個人的にはいつでも何があっても覚悟を持っているし、決断を敏速に行えるよう基準は設けている。
まとめ
シーズンオフのストーブリーグはGMによるチーム構成の構築のために、日々奮闘している姿を表す舞台となっている。
この辺りは、実際に私もチームスタッフで幾度も移籍を経験しているので、オフの時期はいずれにしても心の休まるものではない。
まだまだ詳細や細かい部分ではさまざまな展開があり、チーム側の人間としては、さまざまなチームの選手やスタッフとの連絡が過密化されている時期となっている。
ストーブリーグに関して、1つお勧めしたいのが『ストーブリーグ』というタイトルの通り、まさに韓国プロ野球チームのシーズンオフを題材にした韓国ドラマはとても面白く見応えがあるので、ぜひ一度試聴されるのも良いかと思います。
今年のストーブリーグを通して進化した各チームの戦いを開幕戦から私自身楽しみにしているところです。
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