バスケットボール選手の成長痛で多いのが、オスグッドである。
小学5年生頃から急激に身長が伸びることと運動量も多くなる時期が重なり、まだまだ不安定な膝の骨(脛骨)が引っ張られることで痛みや変形が起こってしまうケースとなる。
いかにセルフケアを行い、練習しながら対応できるかがポイントとなる。
結論
・痛みが強くある場合はしばらく練習は休んで医療機関へ。
・多少の痛みであれば、練習をやりながら、セルフケアをしっかり行なって対応する。
・痛みが引くまで休んでも、練習を始めれば痛みは再発する。そのためセルフケアが重要である。
※毎日練習もセルフケアも継続することが、バスケットが上手くなる秘訣である。
オスグッドとは
オスグッドとは、正式名はオスグッド・シュラッター病という。
ももの前にある筋肉(大腿四頭筋)が膝のお皿(膝蓋骨)を通って靭帯(膝蓋靭帯)となって骨(脛骨)にくっつく。
そのくっついた部分が強く引っ張られることで炎症症状となり、痛みが出る。
走ったり、ターンしたり、ジャンプなどする事で膝の曲げ伸ばしが繰り返し起こる事で筋肉が硬く縮んでいく。
そうなる事でより骨が引っ張られてしまう。
大腿四頭筋 | 大腿直筋 中間広筋 内側広筋 外側広筋 | 膝関節と股関節をまたぐ2関節筋 中央の奥にある、膝関節のみ 内側の盛り上がり、膝関節のみ 外側の筋肉、膝関節のみ |
発生メカニズム
小学5年生くらいになると身長が急激に伸びてくる。この時に一番成長するのが大腿骨(ももの骨)である。骨の成長と同じように筋肉も伸びてくれれば良いのだが、筋肉などは骨よりも成長の速度が遅い。
そのため、通常でも引っ張られる形となる。
さらに、チームの練習や試合があり、ジャンプやダッシュ、ターンなど激しい動きが繰り返される事で、筋肉は疲労する事で縮んでしまう。
そうなるとさらに引っ張られる力が増してしまう。
まだまだ不安定な骨は引っ張られる事で痛みと変形を起こしてしまう。
ポイント
骨は成長する / 筋肉は成長が遅い
↓
骨が引っ張られる
さらに激しい運動する
↓
筋肉が疲れて硬く縮む
↓
骨がさらに引っ張られる
対策
練習を休まなければならない場合
・普通に歩くこともかなり痛みが強く、普通に歩くことができない
※医療機関に受診してレントゲン検査なと医師の診察を受けましょう
アイシングとストレッチ等セルフケアもしっかり行うい回復を優先
ただしドリブルハンドリングなどやれることはしっかりやろう
全く何もしないとバスケットは上手くならないぞ
時間制限して練習参加
・練習前は痛いが、体が温まると痛みが軽減する。しかし、練習後半になると痛みが強く出る
※時間を決めて練習参加(例えば1時間半まで)、
翌日痛みが楽になっていれば15分延長してみよう(1時間45分)
翌日痛みが悪化しているなら15分短くしましょう(1時間15分)
練習を外れたら、まずはストレッチを行う。
氷があるならアイシングも行う。
その後は足を使わないドリブルハンドリングなどをできることは行う
練習は全て参加しながらで大丈夫
・痛みは出るけど、練習中はなんとかなる
※練習後にストレッチ、アイシングを必ず行うこと毎日
上記以外のセルフケアもしっかり毎日行うこと
少しでもサボると痛みが増して練習ができなくなってしまう
セルフケア方法
オスグッドの痛みは長期間に渡って続くので、セルフケアがとっても重要で大切。
バスケットボールは毎日継続して上達するように、オスグッドに対するセルフケアも毎日継続することで改善方向に向かっていくことに繋がります。
アイシング
セルフケアで最も大切なことはアイシングになります。
アイシングの方法はこちらを参考に
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・カビが発生しない
・臭くならない
・全体的に洗える
・耐久性が良い
他の布製のものは衛生面で良くないです
【デメリット】
汗をかく(表面に水滴)ので濡れる
ストレッチ
ももの前のストレッチ(大腿四頭筋)
↑1.先ずはこのストレッチをして欲しい。
大腿直筋のストレッチ、大腿直筋は一番表面にあるのでまずこの筋肉のゆとりを出すことで、その他の3本の筋肉も伸びやすくなる。
↑2.オスグッドの選手はなかなかできないと思うが、このストレッチが理想です。
これができるようになれば、練習は行えるレベルにある。
↑3.よくやるストレッチ、大腿四頭筋の大腿直筋を除いた3本の筋肉のストレッチ
1と3は必ずやる
↑4.メチャメチャ伸びるストレッチ。
足の指を立てて、膝をつく。→そこから両手を後ろにつく。片膝を浮かせる。
写真のように右足がとても伸びる
ももの裏のストレッチ(ハムストリングス)
5.ももの裏も伸ばして欲しい。成長期は骨の成長が筋肉よりも早いのは裏側も一緒である。
そのため、裏側も硬くなってしまいう。
ももの前が柔らかいのに痛みが強い場合、ももの裏がとても硬くて痛くなる場合もある。
これは膝のゆとりがなくなり、関節が良い滑り動作をできなくなってしまうためだ。
ももの裏はストレッチボードがとても効率よく伸ばせるので、家庭にあると良いかと思う。
ストレッチボードはこちらを参考に
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・角度調整ができるので、怪我をした時のリハビリでも角度を変えながら段階的に伸ばしていける
・家族でも個人差があるので角度を変えながら調整できるのでとても便利
・プロチームの使用頻度は1番多い
・その他のものよりも長期使用できる
・お父さん世代はアキレス腱を切りやすい世代なのでやる習慣をつけ予防策
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筋肉をほぐす
練習や試合で激しい運動をすると筋肉は疲労して硬くなってしまう。筋肉をほぐすことも筋肉の柔軟性には必要である。
トリガーポイント
筋肉は筋肉自体と筋肉を包む膜がある。この筋肉と膜がひっついてしまうことで、痛みや硬さ、動きの制限が出てしまう。
そのためにはトリガーポイントで筋肉の走行に対してコロコロと押し当てる。次に筋肉の走行の真横に対してもコロコロ行う。
トリガーポイントのコツ
マッサージ
オスグッドは大腿直筋のつく所(前の硬い骨のすぐ下あたり)がとても硬くなってしまう。
ここをしっかりと自分でマッサージしてほぐすことはとても重要なポイントとなる。
ポイント
オスグッドで練習ができないくらい痛みがある選手のほとんどはこの股関節前面部の大腿直筋の付着部が固まっている。
ここをほぐすだけで、劇的に楽さが出て本人のモチベーションが高まる
※必ずほぐして欲しい
入浴
今の若者はシャワーで済ませてしまう文化となりつつある。しかし、入浴することで血流が良くなって疲労が早く解消される。
入浴後の方が効果的にほぐしやストレッチも有効となる。
個人的にはぬるま湯に半身浴をお勧めする。その際に重炭酸湯にするとより毛細血管への血流が促進されるので疲労は取れやすい。
テーピング
テーピングにも色々な巻き方があるが、オーソドックスな2種類を紹介する。
ホワイトテープ
使用テープ:ホワイトテープ13mmまたは25mm 伸縮しないタイプ
お皿(膝蓋骨)の下にテープを3周巻く。これだけで十分効果がある。
(テーピングの強さは自分自身で調整してどのくらいの強さで巻くのかを確認する。)
目的:お皿の下にある靭帯(膝蓋靭帯)を圧迫することで、オスグッドの骨についている所の引っ張る力を抑える働き
キネシオテープ
使用テープ:キネシオテープ50mm 伸縮タイプ
準備:テープの端10cmくらいをハサミで2つに切り分ける
1.お皿の下から2別れのテープを貼る。
↑2.この時に膝を曲げて、テープを80%ほど引っ張りながら、お皿を包むように貼る。
↑3.立ち上がり、片足前(貼る足)にして膝を曲げる、この時膝は曲げながら、状態を起こして股関節は伸ばす
その体勢のままテープを80%引っ張って貼る
目的:筋肉をサポートして筋肉の疲労を遅くさせる働き
※痛みが強い場合は上記の2種類のテープを合わせて使用しても良い
スクワット動作(パワーポジション)
↑バスケットボールではパワーポジションでの体制が基本動作となる。この時に状態とスネが平行になっていると良い。
バスケットではOFとDFでは重心の位置が微妙に異なってくる。
OF時はやや前方(拇趾球あたり)にDFでは足の裏全体に体重をコントロールするかと思う。
↑状態が後方へ移動し、カカトに体重が乗っている。
このような状態では大腿四頭筋にかなりの負荷がかかっている。
このような体勢を長時間行うことで、オスグッドの症状は悪化してしまい、大腿直筋の緊張が増して固まってしまう。
パワーポジションのポイント
1.パワーポジションをとって上体を前後に体重移動してみる
2.最もももの前面が楽なところを意識して覚える
3.楽なポジションでスクワット動作を行ってみて痛みの違いが出るか確認
4.そのポジションを反復練習して習得する
動きを変えることで初めは違和感があるかもしれないが、膝の痛みを優先して慣らしていく。
体幹
ベアー
オスグッドの痛みがある選手始め、小学5年生から中学生にやってもらいたい体幹トレーニングである。
足を伸ばしてやるスタビライゼーションはよくやるトレーニングであって、意外と浸透しているかと思う。
↑ベアーという名のトレーニングである。
スタビライゼーションはシュートを打つ際の安定に重要な体幹トレーニングである。
このベアーはパワーポジション時の体幹トレーニングとなる。そのためバスケットボールで最も行う動作の安定を出す形である。
オスグッドの選手はこのベアーの安定性がかなり弱い(特に痛みが強い足は弱い)。
まずは20〜30秒安定出来るようにしたい。それが出来るようになったら、その安定した状態から手や足を動かせるようにしたい。
この辺りができるようになると実践的な体幹が強化されていくこととなる。
足を固定した腹筋は❌
↑❌このような足を持ってもらっての腹筋はオスグッドの選手はやるべきではない。
よくペアでやる腹筋のトレーニングであるが、むしろやってはダメな種目である。
足を持つことで固定される。固定されると股関節を曲げる動作は大腿直筋を最も使う。
ただでさえ練習で酷使し、股関節が緊張して硬くなっている状態で、より負荷をかけることはオスグッドを悪化させてしまう。
同じような動作で腹筋をやるのであれば、足を固定しない方が断然良い。
このような腹筋は高校生以降で良いかと思う。
まとめ
オスグッドは痛み出したら、長期間の痛みが伴う成長痛である。
私が過去30年間経験し、オスグッドの選手で痛みが強い選手はまずセルフケアがしっかりと行えていない。
小学生や中学生はまだまだ自分自身の面倒なことは避けてしまいがちである。そして痛くて練習ができなくなったら、
病院や接骨院へ受診し、治療してもらう。そしてしばらくしてよくなっても、また痛くなってしまう。
こういった繰り返しである。まずはしっかりとセルフケアをできねような教育が必要である。
それには、本人だけでなく、家族や友達、コーチの力が必要で、皆でサボートしながら対応しなければならない。
バスケットの技術の上達と同じようにセルフケアを行う習慣ができれば、メンタルの強い選手となり、将来期待できるのではと思う。
この記事が参考になれば幸いである。
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